椅子というのは、家具の中でも不思議な魅力を持っていますね。
体を支えてくれるものだからでしょうか。空間の中でいつも目に触れているからでしょうか?長く使っていますと親しい友達のようなそんな気さえしてきます。
私が、社会に出て一番初めに買った椅子が、一脚のトーネットの曲木の椅子、
結婚した時に買った椅子が、福田友美さんデザインの秋田木工の曲木の椅子二脚とテーブル、
ちなみに住み替えた時に買った椅子はインテリアセンターの「ルントオム」4脚で、
今なおこれらの椅子を使い続けています。(我が家はすべてナチュラルカラーですが・・・。)
トーネットの曲木の家具は、本当に優雅で美しいと思いました。
日本人にはちょっと座高が高いのですが、とても足を切ってしまうなどということは考えられませんでした。・・・ということで二度目に購入した椅子は国産の曲木になりました。(
秋田木工)
座高が低くてもデザインバランスが取れていたからです。
トーネットの曲木の椅子は、産業革命後、工業製品化、量産化のはしりに位置づけられる椅子です。量産化されることによって、商業空間で多く使われました。ヨーロッパのカフェによくある椅子ですね。代表的な1859年に生まれたNO.14は5000万脚売れて、なお、今もうれつづけているというのですから、ヨーロッパへ行きますと、あちこちで見かけるのも当然ですね。
トーネットの家具については、歴史や特徴が
株式会社アイデックのホームページに資料がまとめられていますので、ご紹介します。
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『曲木の発明』
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『THONET社の設立及びその商標権』
最近訪問した写実絵画の美術館の館長さんが、こんなことを言っています。
『日本が景気のいいときは抽象画が流行りましたが、不況になると写実になるのです。会社の経営者などは現実的で、不況になってくると写実絵画を買っているのです。ウェリントンという世界第2位のアメリカの投資会社の30何階のビルに現代アート、抽象画、印象派、写実派、細密画など2,000点くらいあるのですが、そのなかで、何が一番人気があるか聞いてみたところ、写実、ことに細密画の人気があるとのことでした。7、8年前、ちょうど景気が悪かったときですから、やはりそうなのかと思いました。』
確かに、いま美術番組などでも写実をよく取り上げています。
不景気ということだけでなく、災害の多い昨今、心にゆとりや癒しを求めたくなるのでしょうか?そんな要求が写実などをもとめる傾向となるのでしょうか。
美術同様インテリアに対する需要もそんな傾向があるかもしれません。THONETの優雅な曲木の椅子や、民芸家具、アンティーク家具など、職人さんの手作業のぬくもりが伝わってくるような、またデザイナーや技術者が丁寧にその製作に関与して作り上げられてきた製品群に惹かれる時代かなとも思います。
しかし、トーネットも高くなりました。ドイツ・トーネットの曲木は、今や工芸品ですね。
無印良品では、シンプルなオリジナルデザインを作っています。
背の直線の貫がちょっとカジュアルなイメージを強調していますね。
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無印良品のTHONET
家具史上、これほど隆盛を極めた家具はありません。
産業革命後、機械生産を取り入れ、量産されるようになり、世界中に広がりました。
その後バウハウスの活動を経て、マルセルブロイヤーやミースファンデルローエなどに代表されるデザイナーと新しいデザインにチャレンジしてきました。
上記同様アイデックのホームページより
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『THONET社とバウハウス カンティレバーチェアー編』
そんなトーネットの歴史や製品についてまとめた書籍が鹿島出版から出ています。
このような華やかな歴史を持つ家具があることに、改めて驚きをもって読みました。